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閉校になった牟礼西小学校で創造性を体験! 「つくろう! あそぼう! 未来のこどもラボ2019」開催レポート後編

 

2019年7月27日(土)~8月4日(日)に、閉校になった飯綱町立牟礼西小学校で8日間にわたって開催された「つくろう!あそぼう!未来のこどもラボ」。レポート前編に続き、後編は開催2日目と、最後の2日間の様子をお届けします。

 

ツリークライミングやパラコードを使ったワークショップなどアウトドア要素も
開催2日目となった7月28日(日)も、初日に引き続き、さまざまなワークショップが行われました。 今回、初お目見えとなったのは、専用のロープを使って安全に木登りが楽しめる「ツリークライミングで空中散歩!」。屋外を活用した初めての試みとなるワークショップです。

 

 

飯綱町の隣、信濃町で「黒姫ツリークライミング®スクール」のインストラクターをしている近藤將了さんが講師を務め、子どもたちは牟礼西小のシンボルツリーである大きなトチノキに登り、トチの実を採ったり、普段とは違う目線で周囲を見渡したり、木の上で風を感じたりと、樹上の世界を楽しんでいました。自分の力で木を登ることで、達成感も味わえたのではないでしょうか。

 

カラフルで丈夫なパラコード(パラシュートコード)でブレスレットを作るワークショップも今回初めて開催されたもの。長野市にあるアウトドアショップ「NATURAL ANCHORS(ナチュラル アンカーズ)」の戸谷晶子さんがマクラメ編みのブレスレットの作り方を教えてくれました。

たくさんの色のパラコードの中から参加者が2本選び編んでいくのですが、その組み合わせは個性豊か。特に子どもたちはユニークな色合いで独創的でした。ブレスレットは、大きさが調節できて足首にも付けられる「スライドブレスレット」と、ホイッスル付きのバックルとともに編み込む「ホイッスル付きブレスレット」の2種類。どちらも人気で多くの親子連れが制作を楽しんでいました。

参加者の中には東京から来ていた方も。上原なぎささんと心春ちゃん(8歳)、葉菜乃ちゃん(5歳)は、おばあちゃんの家がある中野市に遊びに来て、市立図書館で「未来のこどもラボ」のチラシを見つけ訪れたのだそう。「ブレスレットは初めて作ったけど、楽しくて面白かったです。でもちょっと難しかった」と心春ちゃん。夏休みの自由課題のアイデアにもなったそうで「ほかのワークショップもやりたい」と話してくれました。

「‘SDGs’ゲームー未来を考えよう!」は、ガールスカウト長野県第11団によるワークショップ。6月に高校生年代のメンバーが先生となって「持続可能な開発目標(SDGs)」のもと世界の現状に目を向け、教育の大切さを同時期に考えるという地球規模のイベント「世界一大きな授業2019」を実施したことから、今回は小学校高学年のメンバーが先生役にチャレンジしました。

 

「SDGs」をテーマにしたゲームを通して、世界では字が読めて書けることが当たり前ではないこと、学校に行けない子どもたちがいることを伝え、よりよい未来を考えるきっかけを与えていました。

 

このほか、初日と同様に、「かえっこバザール」やプログラミング、ダンボール獅子や「しまんと新聞ばっぐ」を作るワークショップなども開催されていました。

長野美術専門学校美術研究部の「いろいろモノづくりワークショップ」では、ペットボトルをアレンジした風鈴やタペストリーを制作。

また、自由に絵が描ける「らくがき黒板」には、子どもたちが大胆なイラストを楽しんでいました。

 

楽しみながらの仕事体験でイベント運営に参加できる「ジュニアラボスタッフ体験」も。長野市のこども広場「じゃん・けん・ぽん」でチラシを見て参加したというのは、滝澤清子さんと向日璃ちゃん(7歳)、璃瑚ちゃん(5歳)、松田明子さん、龍磨くん(7歳)、昇磨くん(5歳)の6人連れのご一家。 「きょうはいとことおばあちゃんも一緒に一番乗りで来ました。『かえっこバザール』もジュニアラボスタッフも楽しく、放送室で校内放送のアナウンサーをしたのは緊張しました」と子どもたちが話してくれました。

前日、越ちひろさんが参加者と作品を制作した教室では、完成したカラフルなアート作品の展示も。この展示は最終日まで続きました。

屋外では長野市のりんご農園「やまだい農園」の出店も好評でした。

7日目は長野県内外の大学生のワークショップや展示も
開催7日目も「かえっこバザール」やパラコードを使ったブレスレット作り、大工さんによる木の椅子や箸作り、ビニールを使ったパラシュート作り、「しまんと新聞ばっぐ」作りなどのワークショップを開催。

作家ものの小物や雑貨、文房具などを販売する「ラボショップ」にはにぎやかなポスターも飾られていました。

そのなかで初開催となったのが、長野県立大学の萱津理佳先生と「発信力ゼミ」を受講する1年生によるプログラミングワークショップです。紙やスマートフォン、タブレット上に描かれた線に沿って動く小さなロボット「Ozobot(オゾボット)」と、3歳から楽しめるイギリス発の木製のロボット「Cubetto(キュベット)」を使ったブロック遊びでプログラミングを学ぶもので、どちらもすぐに定員がいっぱいになるほどの人気でした。

萱津先生はもともと小学校高学年向けのプログラミング教育をしてきましたが、未就学児向けのワークショップは今回初めてだったそう。 「小さな子どもたちが素直に楽しんでいるのが印象的でした。ロボットが勝手に動くものではなく、命令を与えて動くという楽しさをきっかけにプログラミングに興味をもってもらえたら」と萱津先生。 また、今後小学校でプラグラミング教育が必修化されますが、今回のワークショップを通じて県立大学で小さな子ども向けのプログラミング教育ができそうだという手応えを感じたそうです。

 

なお、「発信力ゼミ」は全学共通のゼミだそうで、萱津先生は学生たちに「プログラミングを意識せず未就学児と一緒に見て遊ぶ感覚で楽しんでもらうように」と伝えていたのだそう。なかには保育を学ぶ「こども学科」の学生もおり、子どもと楽しくやりとりをしている様子が印象的でした。

また、夕方には「未来をつくる親子のためのデジタルルールワークショップ」が開催され、メディアアーティストの宮原美佳さんがファシリテーターとなり、参加した親子が各家庭のデジタルルール作りを話し合いました。県立大学の学生もボランティアとして参加。発表の時間には学生たちも高校時代のスマホの利用状況などを話し、盛り上がっていました。 「大学生が入って話ができたのがよかったです。最終的に子どもたちに自分で考えて使ってもらうためにも、きょうのように考える時間をもうけていくことが大切だと思っています」と宮原さん。

牟礼西小学校がある野村上地区から参加した小林章博さん、奏くん(12歳)は、まさにこれからデジタルルールを決めていくところで参考になったそう。今回イベント関係者から聞いて訪れたそうで、「今年初めて参加しましたが、パラコードを使ったブレスレット作りも楽しかった」と感想を寄せてくれました。

同じく初開催となったのが「作ってみよう! ハーバリウム・木の実リース」のワークショップです。講師を務めたのは、長野市で自宅教室を開いている「neoflowet花空」の小笠原妙子さん。500円で流行のハーバリウムが作れるとあって大人気で、参加者は真剣に好きな瓶や中身のドライフラワーを選び、オイルを詰めていました。

木の実リースは土台に好きな木の実をブルーガンで付けていくもの。ブルーガンが高温になるので、小さな子どもは大人と一緒に注意深く制作を楽しんでいました。

「普段は自宅教室なので、広いスペースでワークショップができる機会がなかなかなく、のびのびとできました。思っていたより多くの方が参加してくれてうれしいです」と小笠原さん。 信濃町から2週連続で参加し、普段は牟礼小学校の支援員をしているという鈴木麻美さんと美憂ちゃん(12歳)、朱莉ちゃん(8歳)、彩心ちゃん(4歳)、竹内美智代さん家族は「開催を知って絶対に行こうと思っていました。先週はパラコードのブレスレットを作り、きょうはハーバリウムを作りたいと再び来ました。普段はできない体験ができて楽しいですし、パラコードのブレスレットは参加できなかったパパの分も作れてよかったです」と感想を寄せてくれました。

長野市から参加した今井 宗さん、明子さん、優生くん(2歳)、春くん(0歳)もさまざまな制作体験を楽しんでいましたが、笛が好きなので特にパラコード作りが楽しかったそう。また、優生くんはトンカチなど大人が使う“怖いもの”も好きだそうで、木の椅子作りや箸作りも楽しんだそうです。「参加費500円でいくつも作れるのもよかったです」と話してくれました。 そして、3階の校舎では、2018年から飯綱町でまちづくり活動を展開する金沢工業大学と千葉工業大学の学生による展示発表も。

空き家になった別荘をリノベーションし、キャンプの要素を加えた別荘再生プロジェクト「IEMP(イエップ)プロジェクト」や、現在進めているツリーハウス制作を紹介していました。 5月には「IEMPびらき」と題し、リノベーションした別荘を地域の人にお披露目するイベントも開催したそうで、「手をかけて作った空間なのでイベントだけの利用ではもったいない。地域の人たちにも活用してもらいたい」と学生たちは話していました。

また、ツリーハウスの模型作りのワークショップも実施。建築への興味のきっかけになったことでしょう。

廊下では信濃町にある総菜屋「弁天食品」のパンの販売も。屋外では飯綱町のカフェ「古民家カフェのらのら」のサンドイッチやハンバーガーなどが販売され、すぐに完売するほどの人気でした。

最終日も創造力を培う多彩なワークショップ盛りだくさん
いよいよ最終日。この日も多くのワークショップが行われました。 「立体に色を塗ろう!−蝶々・たまご・ウェルカムボード−」のワークショップは、長野美術専門学校講師で彫刻家の吉田昌司さんによるもの。参加者は吉田さんが作った紙細工や石膏製の蝶やだるまなどさまざまなオブジェから1つを選び、自由に色を塗って立体作品を仕上げていました。

同じく長野美術専門学校講師でグラフィックデザイナーの相澤徳行さんによる「カンナ屑であそぶ! 木のリボン」は、大工が削った材木から出たカンナ屑を使って一輪挿しにさす花のオブジェを作るワークショップ。

水に浸けて柔らかくしたカンナ屑を使って自由に花の形を作ります。カンナ屑の色は自然由来で、木の種類によってずいぶん色が違うのがわかりましたし、熱中して何個も作る子どもたちの姿も見られました。

また屋外で開催された「木がもっと好きになるクラフト体験 広葉樹でオブジェをつくろう!」は、ゴツゴツしていたり曲がっていたりといろいろな形の木を使い、自由な発想でオブジェを作るもの。子どもたちは自然のデザインを生かしたクラフト体験を楽しんでいました。

屋外では、飯綱町の南インド料理店「モンマルシメ」のドリンク出店も。

また、ボランティアで活躍する学生の姿も多く見られました。

神奈川県藤沢市から来ていた小峰健嗣さん、めぐみさん、愛恵さん(15歳)、望くん(10歳)は、長野市にある健嗣さんの実家に1週間滞在するなかで、長野市役所でチラシを見て遊びに来たのだそう。「夏休みの子どものワークショップとしてのんびり参加できてよかった」と話していました。 そして、開催期間中、「メモリアルルーム」では昨年制作された「世界でただ一つの西小」と名付けられた映像もモニターに映し出され、懐かしそうに眺める地域の人の姿も見られました。

廃校を活用して新たなクリエイティブの場を創出した今回のイベント。ものづくりやアクティビティを通じて、子どもたちは自分で考え、工夫をして取り組む楽しさを感じたのではないでしょうか。また、参加者した大人たちからは、廃校を利用した事業に対する期待の高さと、ワークショップを通じて子どもたちとものづくりの楽しさや成長を分かち合いたいという思いも感じられました。今後、各地で学校の統廃合が進むと言われるなか、こうした取り組みが広がる可能性も感じました。

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