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閉校になった牟礼西小学校で創造性を体験! 「つくろう! あそぼう! 未来のこどもラボ2019」開催レポート前編

 

 

2018年に引き続き、閉校になった飯綱町立牟礼西小学校で開催された「つくろう!あそぼう!未来のこどもラボ」。「こどもたちにまだ見ぬ明日を創造するクリエイティブな視点と学びを」というコンセプトのもと、“これからの未来をきりひらく地域の学び場”をテーマに、7月27日(土)~8月4日(日)まで、8日間にわたってさまざまなワークショップやアート展示が行われました。まずは初日のレポートをお届けします。

 

 

27日(土)のオープニングイベントでは、小学校周辺の地区の方々により、地域に伝わる獅子舞が披露されました。魂が入ったような生き生きとした獅子の動きに、会場全員の目が釘付けに。オープニングを盛り上げました。

 

 

入場すると、まずは受付で名前を記入。そこから、各教室で行われているさまざまなワークショップや展示へと向かいます。

 

 

受付最寄りの教室で行われていたのは、作家ものの小物や雑貨、文房具などを販売する「ラボショップ」。室内の一角は授乳用スペースになっていました。

 

 

新しい体験にふれ、考えながら遊び、見たことのないものを見る経験
さて、この企画のクリエイティブな体験のポイントは、昨年同様、3つ。 ひとつが、新しい体験にふれる「さまざまなワークショップ」。今回のワークショップは土・日曜のみの開催で、子どもはもちろん、大人も楽しめるものばかり。参加費はワークショップにより異なり、無料ワークショップもありました。

 

 

ふたつめが、昨年も好評だった、考えながら遊ぶ「かえっこバザール」。自宅で使わなくなったおもちゃを持参し、設置されているおもちゃと交換できる通貨「カエルポイント」に換えて、欲しいおもちゃとかえっこできる企画です。

 

 

3つめが、見たことのないものを見るアート展示。長野美術専門学校の学生たちによる黒板アートを見たり、初日の7月27日には限定企画として、3m×3mの巨大な絵画を千曲市出身の画家・越ちひろさんと一緒に描く参加型アートが開催されました。

 

 

越さんによる参加型アートは、越さん手作りの菱形のようなキラキラ型のステンシルをキャンバスに当て、その上からさまざまな色をスタンプのようにスポンジで押し、重ねていくというもの。ステンシルは10種類ほどの大きさがあり、子どもたちは型や色を自由に選んで白いキャンバスをキラキラ模様で埋め尽くしていました。

 

 

プログラミングやクラフト体験のワークショップで創造的な学びを
ワークショップも盛り上がっていました。 1階奥のかつてコンピューター室だった教室で行われていたのが、昨年も大人気だったプログラミングワークショップ。飯綱町在住のメディアアーティスト・宮原美佳さんと夫の宏明さんが講師を務め、iPadアプリを使ってオリジナルのデジタル絵本を作る「ピッケのつくるえほん」や、ビジュアルプログラミング言語「ビスケット」と「ピョンキー」を使って、iPadでプログラミングをするワークショップが行われました。

 

 

「ピッケのつくるえほん」は小さな子どもも楽しめるもの。子どもたちはオリジナルのストーリーを作って紙に印刷し、実際にミニ絵本も作成して、プログラミングとものづくりの両方の楽しさを見出しているようでした。

 

 

「ビスケット」も小さな子どもでも簡単にコンピュータプログラムを作れるソフトウェア。「メガネ」とよばれる独自の入れ物を使い、さまざまな組み合わせによってアニメーションやゲーム、絵本などを作ることで自然とプログラミングに対しての直感が育まれます。

 

 

「ピョンキー」は小学低学年以上を対象にした、教育用プログラミング環境の定番「Scratch」のiPad版。動くビジュアルプログラミング環境で、子どもたちはタブレットならではの物語制作を楽しみながらプログラミングの理解を深めていました。

 

 

2階で行われたのは、こちらも昨年も好評だったダンボールで獅子を作るワークショップ。長野美術専門学校講師でグラフィックデザイナーの轟久志さんが講師を務め、ダンボールを切り取って組み立て、自由にイラストをのせていくものです。

 

 

昨年はダンボールにすでに獅子の絵が描かれていましたが、今年は無地のダンボールを使うことで、より子どもたちの想像力がかきたてられ、創造力が育まれているようでした。 「自分で色が決められて、獅子の耳やまゆ毛もいろいろな方向に付けられたので、難しかったけど楽しかった」と話すのは、中野市から来ていた湯本凌可くん(8歳)と壱晴くん(6歳)。お母さんの知恵実さんは夏休みの工作がてら長野市近郊でワークショップを探し、「Kids Komachi Web」のイベント情報から今回の開催を知ったのだそう。 「楽しんでやってくれてよかったです。最初は緊張していたので、ワークショップの先生に話しかけてもらえると入りやすいですね」と感想を寄せてくれました。

 

 

完成後は楽しそうに獅子を被る子どもたちの姿であふれていました。

 

 

その隣の教室で行われていたのは、こちらも昨年から継続の「『しまんと新聞ばっぐ』をつくろう!」。2002年に高知県在住のグラフィックデザイナー・梅原真さんの「四万十川流域で販売される商品はすべて新聞紙で包もう」との提案から派生したもので、ワークショップでは「しまんと新聞ばっぐ」インストラクターの高村典子さんが新聞とのりを使ったバッグ作りを教えてくれました。どんな大きさのバッグにするか、新聞のどの面を表にするかといった工夫によって、それぞれの個性が発揮されるバッグが作られていました。

 

 

また、同教室では、ビニールとペットボトルのキャップを使ったパラシュート作りの無料ワークショップも行われていました。

 

 

3階では、長野美術専門学校の美術研究部による「いろいろモノづくりワークショップ」と、町内の工務店「ツチクラ住建」の大工さんによる木の椅子づくりなどのDIY講座が開講。「いろいろモノづくりワークショップ」はペットボトルを使ったモビール作りなどが行われ、DIY講座では大工さんの丁寧な指導のもと、実際に子どもたちがインパクトドライバーなどの本格的な工具を使って子ども用椅子を制作したり、カンナを使って箸作りなどを体験していました。

 

 

夢中になって木工体験をしていたのは、長野市から来ていた田中岳くん(5歳)と稜くん(2歳)。お母さんの千香子さんも「Kids Komachi Web」のイベント情報で開催を知り、遊びに来たのだとか。 「長野駅付近だと人が多いのですが、ちょうどよい規模感で楽しめました。大工さんが教えてくれて体験できるのが魅力でした」と話してくれました。

 

 

「大工体験ができ、獅子作りでは楽しくペンを使って描くことができて、料金設定も格安なので驚きました。いろいろと体験させてもらえて感謝しています」と話していたのは、田中さん親子に誘われて一緒に足を運んだ矢崎愛美さんと息子の一稀くん(6歳)、夏来くん(3歳)。椅子に座ったり、獅子を被って楽しそうに遊ぶ兄弟の姿が印象的でした。

 

 

その隣の教室ではセブンイレブンが出店しており、子どもたちが販売員体験に真剣に取り組んでいました。

 

 

「かえっこバザール」は今回も大人気
子どもたちはイベント運営のスタッフ体験ができる「ジュニアラボスタッフ」にチャレンジすると「かえっこバザール」で使える「カエルポイント」が獲得できるとあって、積極的に挑戦する姿も見られました。

 

 

「カエルポイント」の交換は「かえっこバンク」のカウンターで行われます。おもちゃによってポイントは異なり、ポイント査定も「ジュニアラボスタッフ」が担当しました。子どもたちは自分の価値観でおもちゃを査定し、「カエルポイント」を発行していました。 「かえっこバザール」自体も大盛況。おもちゃの山に囲まれてここから動かなくなってしまう子どもが続出していました。「楽しい」とおもちゃを選んでいた長野勇太くん(7歳)と翔真くん(5歳)のお母さん、千加代さんはFacebookで開催を知り、須坂市から足を運んだとのこと。「プログラミングやワークショップを目当てに来ましたが、到着したばかりの今は『かえっこバザール』に夢中です。いい雰囲気で、この後も楽しみです」と話していました。

 

 

参加型アートによる巨大な絵が完成!
越さんの巨大アート作品も着々と仕上がっていました。

 

 

夢中で色を塗っていたのは、長野市から来た西原綾那ちゃん(4歳)。お母さんの友希さんいわく、観光帰りに偶然近くを通りかかり、のぼり旗を見て来てみたのだとか。 「イベント自体は友だちに聞いて知っていましたが、廃校を活用した事業は長野県にもあるんですね。娘は色を塗るのが大好きで、幼稚園でも絵画造形教育に取り組んでいますが、家ではこんなにたくさんの色を塗ることができないのでありがたいです」と話してくれました。

 

 

こうして完成した作品は期間中は教室内に展示されており、9月からは千曲市の新庁舎に展示されています。

 

 

なお、土・日曜は屋外で地域の飲食店によるフードショップの出店もありました。初日に出店していたのは、飯綱町に5月に開店したばかりの「青空カフェ和夢手(トムテ)」。スウェーデン出身のフレデリックさんと妻のめぐみさんが旬の野菜や自家製パンを使ったランチボックスやドリンクを提供し、今回が出店デビューだそう。大人にも子どもにも好評で、ランチボックスはすぐに完売していました。

 

 

ワークショップの合間においしいご飯を楽しむことができ、会場は笑顔があふれたにぎやかな1日に。また子どもたちにとっては、夢中で取り組んだ先にクリエイティブな創造力や感性を感じることができたのではないでしょうか。

 

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