Interview

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西村啓大さん
実行委員

魅力ある牟礼西小の環境で地域を見直すひとつの機会を提供したい

夏休みを使った子どもの居場所づくりと魅力ある地域の発信
私は牟礼西小学校の最後のPTA会長を務めたのですが、学校の敷地内でりんごを栽培する授業や、きのこ狩り遠足、田植えや稲刈りといったカリキュラムのほか、近くに沢があって遊べる環境など、この学校自体に魅力を感じていました。私自身は移住者で卒業生ではないのですが、自分が卒業していたら楽しいだろうなと、地域の人とは違う視点で見ることができたと思うのです。そんな学校が閉校になり、ただ廃校になるのは寂しいと感じていました。そして、夏休みのひとときだけでも子どもたちが楽しめることを体験する居場所づくりができたら、という思いと同時に、地元の人にとっては当たり前の授業や学校行事でも、他地域から見ると興味深いことであることを地域の人に伝えたいという思いが生じたのです。また、地元を離れている卒業生にとっても、夏休みに帰郷して母校でイベントをやっていたら参加したくなったり、地域の高齢者にとっても、学校で何かやっていたら行ってみようかと感じてもらえるような環境をつくりたい思いもありました。さらに、長野市と合併せず、住民と行政が近い関係である飯綱町だからこそやりたい気持ちもあり、飯綱町への移住十数年目にして、ようやくそうした動きができるようになりました。
アイデアが集結した、子どもたちが学び楽しめる「未来のこどもラボ」
私自身、勤務先のツチクラ住建の社長の影響もあってイベントは好きでしたし、社内ではさまざまな行事を開催もしていましたが、学校や地域を巻き込むイベントは初めてでした。それに、今回のイベントは私一人ではできなかったことから、まずは牟礼西小の最寄りに住んでいる長野美術専門学校の小林勝彦校長先生に声をかけました。夏休みに牟礼西小で何かをやることで、美術専門学校生など、普段、飯綱町にいない若者との交流が生まれないかと感じていたからです。その後、地域でさまざまな活動をしている方や美術専門学校の先生と話すうちに、学校なので学べたり楽しめる場所にできたらいいとの考えから、「未来のこどもラボ」にしようとの結論に至りました。そこで、当社でこれまでに社内イベントで経験のあった木工のワークショップや、子ども向けのプログラミングの講師をしている町内在住の宮原美佳さんのワークショップ、美術専門学校の講師によるワークショップが決まっていきました。また、私は町内のつながりから、さまざまな飲食店の方による出店のアイデアも提案しました。
さらに、美術専門学校のつながりから、かえっこバザールやトイザウルスなど、イベントの目玉となるような全国で活動している方々に声をかけたことで、幅が広がりました。トイザウルスは四国や香港、ニュージーランドなど各地の展示先から運ばれてくる壮大さがおもしろかったですし、そうした吸引力のある美術専門学校の先生の力を感じています。
廃校利用を通じ、これからの地域のあり方を地元の人とともに考えたい
1年目は「何があるかわからないから楽しい」という手探り感がありましたが、ある程度、人の流れが見えた2年目の今年は、昨年のプログラムに加え、校庭にある木に登るツリークライミングなど外で遊べるワークショップも考えています。また、千曲市出身の画家・越ちひろさんと子どもたちとの作品制作も予定しています。
さらに、このイベントには「この西小からあなたにはどんな未来が見えますか」というサブタイトルを設け、子どもが減って廃校になった地域の未来は大人が考えていかないと地域自体が廃れてしまうというメッセージを込めています。私は地元出身ではないからこそ、魅力的な場所でいい学校があるのに、廃校になるのはなぜか考えてほしいということを地元の人に伝えたいと思ったからです。このイベントを通じ、四季の営みがある飯綱町の魅力を見直すひとつの機会になったらいいなと考えています。
また、子どもたちにはボランティアスタッフをお願いしていますが、それは子どもの育成にもつながります。昨年、子どもたちが学年や年齢に関係なく率先してほかの子どもにボランティアの方法などを教えている様子を見て、これはかつて牟礼西小でも見られた光景で、こうした取り組みを子どもたちが自然な流れで行うことで、大人や他地域の人をもてなす感覚が素晴らしいのではないかと思いました。こういうかたちを続けていけたらと思っています。

この事業はあくまで牟礼西小の廃校利用であり、3年間、実験的に取り組むことで、地域にどのような影響があるかを考えるものです。地域の人の学校に対する温度差はさまざまですが、何も利用されないよりは何らかのかたちで使われることが大切です。それに、シナリオがあるのではなく、その時々の様子を見ながら時代とともに変わっていくことが地域の営みだと思っています。今年このイベントに関わった人がどう思うか、廃校利用がこれからどうなっていくかという楽しみも感じつつ、飯綱町の人にはどんどん遊びに来てもらいたいですね。