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小林重之さん

子どもたちが通っていた校舎を活用し、みんなが笑顔になるような取り組みを

「緑の香り清き牟礼西小」だからできた特色ある取り組み
牟礼西小学校の校長に赴任した当時、私は学校のキャッチフレーズを作りました。「緑の香り清き牟礼西小」。これが、この学校の全てを物語っていたように思います。森とつながっているような環境で、いいづなリゾートスキー場までは一番近い学校であり、ゲレンデまではバスで15分。スキーを好んで練習するような子どもたちにも選んでもらえる場所でした。
そんな牟礼西小で特色があった取り組みのひとつが「きのこ狩り遠足」です。1年生から6年生までの縦割りグループになり、6年生が藪をかき分けながら低学年の生徒を連れて雑きのこを採って山を登るのです。そして、霊仙寺湖畔のバーベキューエリアで地域の専門家に食べられるきのこを鑑定してもらい、きのこ汁を作って全校生徒で食べました。こうした取り組みができたのは、この環境ならではだと思っています。
また、当時、私は学校7時ごろに出勤して1時間ほど子どもたちの登校を迎えていました。雪深い地域であっても大雪が降ると子どもたちは喜んでいましたが、ある女の子はランドセルを背負ったまま新雪の上に飛び込んで泳いでいました。「これが子どもがもっている本来の純粋な心だな。こういう素直な表現がこの地域ではできるんだ」と感動したのを覚えています。また、夏は女の子でもカネチョロ(ニホンカナヘビ)を宝物のように抱えていたのは、この環境がなせる技です。そういう光景が日常にあるなかで、まさに「緑の香り清き牟礼西小」を肌で感じていました。
今は統合されて牟礼小学校になりましたが、これから歴史を積み重ねていく同校でもこうした特色ある活動がつながっていくといいなと感じています。
子どもたちが主体的に体験できる「未来のこどもラボ」は理想的
「未来のこどもラボ」には1年目も2年目も参加しました。まず、ネーミングがいいですね。未来の宝である子どもたちが積極的に研究や勉強ができる場所を「ラボ」とうまく表現していただいたと感じています。未来へと続く夢のあるイベントにしていただきました。また、廃校になった校舎を使ってもらうことで、卒業生にとっては故郷である場所に戻ってきてイベントに参加ができるところも魅力だと感じました。
イベントのなかでも大人気だった「かえっこバザール」は幼心をくすぐり、自分のいらなくなったおもちゃを交換し合うのでもったいなさがない、大変いい活動で、こうした取り組みがもっと広がっていけばいいなと思いながら見ていました。また、子どもが主体的に取り組めるという点では、セブンイレブンの店員体験は子どもにとってなかなかできないことですし、スタッフにとってもコンビニが近くある環境は便利ですから、工夫されたいいアイデアだと感心しました。それに2年目の「未来のこどもラボ」では、飯綱町でまちづくり活動を行ってきた千葉工業大学と金沢工業大学の学生の展示ブースがあり、若い世代が未来の飯綱町について考える場をもてる、よい取り組みだったと感じています。
卒業生にもたくさん会いました。中高生になった生徒はボランティアスタッフの一員として参加していて、母校への思いが現れているようでうれしく思いました。校長赴任時代の思いとしては、学校という人が集まる場所を使って、みんなが笑顔になるような集まりが今後もできるといいと感じており、特に子どもが集まる場所が理想でした。「未来のこどもラボ」はまさにぴったりの取り組みだと思っています。
さらなる工夫で、可能な限り続いていくイベントへ
ワークショップとして印象に残っているのは、町の工務店であるツチクラ住建による木工ワークショップです。緑の環境にいる子どもたちにそうした意識づけができるようなワークショップがあると、周囲の自然に関心をもった大人になってもらえるのではないでしょうか。今、日本では多くの輸入材が使れていますが、里山の整備が進んでいません。今後はできれば地産地消と連動するようなワークショップもあるといいなと思っています。
また、運営面で難しい部分があるかもしれませんが、私としてはカフェのようにみんなが落ち着いてコミュニケーションを図れるような場所があってもよいと感じました。それに、音楽室を使って音楽活動をするなど、それぞれの教室の特色を生かすような取り組みもよいと感じています。若い人が音楽など趣味という余裕をもちながら一度きりの人生を楽しめる、そんな環境づくりがこの牟礼西小の跡地でできれば最高です。
そうしたなかで「未来のこどもラボ」は少しずつ今のかたちで地域の子どもたちに根付いてきているように感じます。開催を楽しみにしている子どももいますし、町内巡回バスも児童館から子どもたちを乗せて運行していたので、このような流れがもう少しつながっていくと、より多くの子どもたちに遊びに来てもらえるのではないでしょうか。地域の子どもたちは、小学校の歴史とともにそれぞれの思いももっています。そうした子どもたちにとって、将来的に牟礼西小の校舎が何らかのかたちで関わりのもてる場所になっていけばうれしいです。
イベントを運営をしていただいた「未来のこどもラボ西小実行委員会」の皆さんには2年間本当に頑張っていただき、廃校の跡地活用で地域に貢献してもらえました。感謝と期待を込め、今後もぜひ長く続けていただければうれしく思います。
●小林重之さん
2013年4月から2016年3月まで牟礼西小学校校長を務め、同年4月から長野県教育委員会の専門指導員に。2019年からは長野県教育委員会でコミュニティスクールのトータルコーディネーターを務めている。